2016年現在、「お笑い」を「アート」の域にまで到達させた芸人は数少ない。
「お笑い」に「演劇」の要素を取り入れた「ラーメンズ」とかは「アート」という領域でも評価されているものの、本質的には「お笑い」自体は「クリエイティブ」なものだと思っている中、個人的に「アート」を感じる芸人は「くっきー」こと野生爆弾 川島邦裕だと思っている。
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決してテレビ受けはしない、ギリギリアウトの世界観
かねてより「支離滅裂」「自由奔放」という形容詞が似合う男、川島邦裕。
「スペースキャンサー」「肉糞亭スポーツ」など、あまりにも独創的な表現を多用する世界観。
僕が最初に衝撃を受けたのは「ゴッドタン!!マジ歌王選手権」に登場した時。
動画が残っていないので、表現しがたいのだがデート前の純粋な女の子の気持ちを王道的フォークポップスで歌い上げるかと思いきや「長渕剛」ばりのエモーショナルなマイナーコード展開で「奥歯!奥歯!前歯!銀歯!」と絶叫。
かと思えば、念仏を唱えるように「歯を磨かぬ子は猿以下じゃ」という和尚のようなフレーズ、そして最後は口の中の菌を「宇宙」に例えてシンセサイザーをかき鳴らす。
終いには、そんな楽曲を一言で「ミクスチャー」と表現。
また、「お笑い芸人」の「クリエイティビティ」を最大限に試される企画として有名な「ガキ使」の「七変化」に登場した回の世界観も圧倒的。
5年前の2011年の回ではあるが、すでに最近の持ちネタである「白塗りの顔真似」は健在。
そして全てのネタで吐血、流血。
個人的に一番不可解だったのが、3つ目の「落語ネタ」
ひたすらバイクのハンドルを握りながら「きみみたいにきれいな女の子/ピチカートファイブ」が流れ続ける。
もはや誰に向けたネタなのか、完全に不明。
しかし、この瞬間は「七変化」史上空前の「異空間」
最後はお決まりの「宇宙」
ちなみに、更なる極限の「クリエイティビティ」を瞬発的に発揮する必要がある「 IPPONグランプリ」でも圧倒的な世界観を展開
千原ジュニアの「当たればホームランやけど、バットごと客席に掘り込む」という言葉が的確すぎるほど、「大喜利」のルールを完全に超越した回答を連発。
「水曜日のダウンタウン」で「子供を笑わせる企画」で完全に子供を置いてけぼりにする「替え歌」をひとかけらの躊躇いもなく歌い切る姿はまさに「現代の侍」である。
川島は音楽ではなく絵画も得意
川島の才能は音楽やお笑いだけではない。
彼にとっては「絵画」もお手の物
やなぎ浩二
加藤浩次、テリー伊藤
中居正広
独特のタッチと表現、そしてなぜかもれなく「巨乳」
しかし、人の特徴を的確に捉えた、まぎれもない「似顔絵」なのだ。
BAZOOKA!!で特集「天才 野性爆弾 川島の世界」
「レイザーラモンRGの突撃!街宣車に潜入」「ミゼットプロレス生放送!」「上祐史浩、オウム洗脳の真実を語る」など、地上波では2秒も放送できないような完全に「アウト」な企画を連発する、テレビ界(CSだけど)最後の砦「BAZOOKA!!」でなんと、川島が特集される自体にまで発展している。
内容言うまでもないが、「勝手に作ったジングルソング(映像付き)」「自身の生い立ちインタビュー(真面目かと思いきや...)」「出演者の似顔絵披露」「顔マネinsta公開」そして「ネタ」と、川島の才能をフルに使い切るような1時間。
基本的に川島は「テレビ受けはしない」のだが、それは単純に「地上波」に受け入れる土壌がないだけであり、「BAZOOKA!!」のような極端に器の広い番組でこそ、その才能は開花するのだ。
ちなみに、ダウンタウンの松本人志は相当川島のことを気に入っているのか、リンカーンやガキ使、IPPONなどでちょくちょく川島を起用しており、松本人志は大爆笑しているもののテレビ的な打率は相当低い。
年末の「笑ってはいけない◯◯」にも出演していたのだが、やはり本編からはカットされてしまった模様。
(ネタは、いつものGLAYのモノマネ)
野生爆弾 川島=アーティスト
以前のエントリーで、「ロバート秋山はクリエイター」という話をしました。
ロバート秋山の「クリエイターズ・ファイル」で見せる、クリエイター的な側面
クリエイターとアーティスト、同じような表現に聞こえる方も多いと思いますが、個人的な定義としては、「クリエイター」は一つのテーマの中で「アウトプット(笑い)」に至る為の要素をいかに抽出するかだと思っています。
料理に例えるならば、限られた材料の中で如何においしいものを作るか、いかに品数を作るか、という発想はクリエイター。
それに対してアーティストとは、己の中に湧き上がるインスピレーションが全ての根源であり、インスピレーションを元にアウトプット(笑い)を生み出すということだと思います。
同じく料理に例える場合、「カレー」を作るときに、食材から考えること。そこまでは普通なのですが、アーティストというのは、自分が選んだ食材を元に「自分がカレー」だと思っているものを作るので、誰が食べても「カレー」だと思えるかどうかは気にしないのです。自分が思う「カレー」を、食材(インスピレーション)から作るのがアーティストだと思います。
ちなみに、デザイナーは自分がイメージするアウトプットの完成度を如何に100%に近づけるかに重きを置くので、料理に例えるなら「完璧な素材、手順、分量」を遵守し、イメージする味に100%精度を高めていくことだと思います。
仕事柄、「デザイナー」「クリエイター」「アーティスト」的な人と接することがあるのですが、それぞれ「プロ」と呼ばれる人はいるものの、「本物のプロ」はこれら3つの性格を高次元で兼ね備えている人だと思います。
話はだいぶそれてしまいましたが、上記の定義に当てはめた場合、川島は間違いなく「アーティスト」だと思います。
他人が「笑い」と感じるかどうかではなく、「ありのまま」の「自分の笑い」を純粋に表現している。
確かに似ているけど、かなり世界観の特殊な似顔絵も、川島には「自分の目に映っているもの」を「自分が面白いと思えるように」ただ書いているだけかもしれません。
歌にしてもそうです。
子供達の前で披露した「Let it go」の替え歌も、「子供を笑わせる」とかまったく感じさせない、本当に「ありのままの姿を見せるLet it go」でした。
紛れもなく、川島はお笑い界に唯一無二の存在かつアーティストだと思います。
ちなみに「くっきー」に改名をしたのは「ベッキーが好きだから」という理由らしいが、まさかその直後に「ベッキー」があんなことになってしまうとは、川島本人も思っていなかったらしく、本人的はものすごくおいしい思いをしたとのこと。
そういったところも、天才、いや鬼才としてもち合わせる才能なのかもしえません。
追記:2017.08.31
Amazonプライムの人気番組「Documental(ドキュメンタル)」シーズン1とシーズン3でも狂気の沙汰を見せてますね。
https://hacllab0.com/amazon-prime-documental
追記:2019.05.25
いつの間にか、国民的お茶の間タレントとして、そしてアーティストとして爆発的にブレイクしてしまいましたね。いつまでも、あの狂気を保ち続けて欲しいものです。